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秘密計算.jp#1を開催![トークセッションリポート有]

Date
2021/8/4
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第1回『秘密計算.jp』が2021年8月4日、開催されました。第1回は株式会社デジタルガレージ DG Lab CTO(Security) の竹之内 隆夫氏、株式会社LayerXのLayerX Labs 所長 中村龍矢氏、EAGLYS株式会社 代表取締役社長 の今林広樹氏、そして株式会社Acompany代表取締役の高橋亮祐氏が登壇しました。
当記事は、同イベント後半のトークセッションを収録した内容を、書き起こし及び編集して書かれています。
イベント前半での各登壇者のスピーチは、秘密計算コンソーシアムメンバー限定のアーカイブ動画にて配信しておりますので、気になる方は是非登録をよろしくお願いします。登録はこちらから

登壇者紹介

株式会社デジタルガレージ DG Lab CTO(Security) 竹之内 隆夫氏

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2005年 日本電気株式会社(NEC)に入社。以後、現在に至る十数年間、匿名化や秘密計算などのセキュリティ・プライバシ技術の研究開発・事業開発に従事。2013年電気通信大学大学院博士後期課程修了、博士(工学)。2019年に株式会社デジタルガレージ株式会社に入社。 現在、研究開発部門のDG Lab本部におけるChief Technology Officer (Security)として、秘密計算を含むセキュリティ・プライバシ技術の研究開発・事業開発に従事。特に、安全なデータ利活用を支えるセキュリティ・プライバシ技術の実用化には法制度等の整備も必要と考え、講演や記事執筆や法学者との連携など、社会実装に向けて精力的に活動中。特に近年は、秘密計算に関する関連企業の連携の場として、「秘密計算研究会」や、一般社団法人データ社会推進協議会の「秘密計算活用WG」を発足させた。

株式会社LayerX LayerX Labs 所長 中村龍矢氏

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研究開発組織LayerX Labsの所長として、デジタル通貨・決済システム、インターネット投票、スマートシティといった次世代の社会インフラにおけるデータのセキュリティ・プライバシーの課題解決に向け、特に秘匿化技術の開発に注力。技術開発や、民間企業・行政との共同プロジェクトを分野横断的に手掛ける。技術研究は学術論文として国内外の学会にて発表している。また、パブリックブロックチェーン分野でも活動。Ethereum プロトコルの脆弱性を複数発見し、仕様策定に貢献しており、日本拠点のチームとしては初めてEthereum Foundationのグラントを獲得した。2020年度IPA未踏IT人材発掘・育成事業に採択。

EAGLYS株式会社 代表取締役社長 今林広樹氏

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早稲田大学大学院在籍中、米国でデータサイエンティストとして活動したことを契機に「AI・データ利活用時代」におけるデータセキュリティの社会的重要性を実感する。帰国後、科学技術支援機構の戦略的創造研究促進事業(CREST)研究助手を務めながらプライバシー保護ビッグデータ解析の研究に没頭。2016年大学院在籍中にEAGLYS株式会社を創業。 企業理念である「あらゆるデータを安全に活用できる社会の実現」に向けてAI解析とデータセキュリティ事業を展開し、日夜エンタープライズ企業を中心とした顧客支援と社会実装に奔走している。

株式会社Acompany 代表取締役 高橋 亮祐氏

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名古屋大学在学中にエンジニアとして活動を始めたことをきっかけに、個人でのwebアプリケーション開発や複数のベンチャーでのインターンを経て、2018年6月に株式会社Acompany創業。これまでに、デジタルキー管理システムの開発、デジタルアセット管理プロジェクトへの参画などの開発実績や総務省・NICT起業家万博を始めとし、複数のビジネスプランコンテンストでの入賞歴あり。セキュアマルチパーティ計算による秘密計算の実用化に注力する。2019年名古屋大学工学部物理工学科卒業。
 

今回のトークテーマ

ー秘密計算・秘匿計算に着目したきっかけを教えてください。

竹之内:個人情報関連で、秘密計算は特に面白いと思ってます。10年前、「パーソナルデータは "the new oil"」と呼ばれていました。そこからGAFAが台頭し、データを囲い込む日本企業はもう終わりなんじゃないかなとか言われるようになりました。データを囲い込むのではなく、流通させる。そこで活躍するのが秘密計算だと。そう思ったのがきっかけですね。
中村:ブロックチェーンを使って企業間のデータ連携したい需要はあったものの、他社にデータを見せたくない意見から注目しました。
高橋:もともとブロックチェーンの事業をやっていました。そこでのヒアリングを通じて、ここからは中村さんと同じなんですけど、データを連携しながらも、他社にはデータを見せたくない話が出て、秘密計算に辿り着きました。
今林:アメリカ企業でデータサイエンティストのインターンをしていた時に、外部とのデータ連携が不可能だったんです。そこから、どこでもドアのように機密なデータにもアクセスできるような仕組みを探していたところ、秘密計算に出会いました。

ーユースケースとして注目している分野はどこですか。

今林:2つあります。1つ目はクラウドにデータを移行する、データウェアハウス(DWH)を構築するためのプロセスの自動化を行うケースです。2つ目は製造業・医療など、クラウドを使うことにかなり抵抗感がある業界での機密データのクラウドAI解析を行うケースです。
中村:関心があるところでは、データ処理の検証可能性が求められるケースですね。今、我々がAnonifyで取り組んでいる部分となります。
高橋:マーケティングの領域ですね。例えばグループ会社が持っているデータを、その他のグループ会社の顧客情報などと組み合わせたデータ連携などです。
竹之内:機微性は高いけど活用する観点が大きいケースです。医療と金融がよく言われていますが、こちらは模索中ですね。

ー秘密計算・秘匿計算の実用度は今、どのフェーズにいますか。

中村:技術自体は、先人の研究で足並みが揃ってきてやりやすくなっています。我々としては、秘匿計算をやる意義のある会社とDXがある程度進んだ会社と取り組むことが大事かなと思います。
竹之内:秘密計算は「データを安全に処理する安全管理」と「複数組織でデータを結合する使い方」の2つの使い方があると思います。中でも安全管理は、準同型暗号ですでに実用化されており、3月にPayPalに買収されたCurvがその事例だと思います。これは、大手が注目してきている証拠です。複数組織での結合は、今後伸びてくる、期待されている分野だと思っています。
今林:秘密計算はクラウドコンピューティングの拡大で、使えるものになってきている感覚があります。歴史を遡れば、我々が取り組んでいる準同型暗号の場合は、2009年にブレイクスルーの論文が出て、2016、17年ごろには研究スピードが格段に上がりました。この頃にはNECやNTTも、秘密計算に関する論文を出していました。
高橋:秘密分散もまた、実装のノウハウをためることで、実装速度が日に日に上がっている感覚がありますね。

ーパートナー企業からの反応はどのような感じでしょうか。

今林:ビジネス展開をする上で課題はまだまだあります、一方で、解析スピードに関しては評価をいただきました
中村:弊社の場合では、やはり技術処理のブラックボックスに関してコメントをいただくことがあります。
高橋:PoC踏まえた導入に進んでいます。思っていた以上にパフォーマンスが出せるとのうれしいコメントをもらっており、製品化に向けたポジティブに動き出そうとしています。

ー秘密計算・秘匿計算に取り組む上での課題はありますか。

今林:技術とビジネス、両方に課題はありますが、私の場合は企業間・業界間の利害関係調整に課題を感じています。外部を巻き込む必要がある場合、いろんなステークホルダーの話を聞く必要があり、ビジネスの進め方にも事業開発力がいるなと感じています。
竹之内:現状、国内における秘密計算は過小評価されています。確かに秘密計算は従来のデータ保護手法よりもコスト高です。一方で、安全性が高い。もっと秘密計算の立場は優遇されてもいいのではと考えています。
中村:現状、世の中はペーパーレスやハンコ廃止の問題の方が優先されており、データ活用の話はまだまだ先のように感じます。なので我々は、世の中が変化するのを待つのではなく、現状を解決するSaaSと並行しつつ、秘匿計算に取り組んでいます。

ーそもそも、匿名化と秘匿化の違いは。

竹之内;例えばA社とB社、双方から提供されたCさんの情報を分析する場合、匿名化情報はCさんを同一人物のデータとして認識できず、分析不可能です。一方秘匿化の場合は、これが可能となっています。感覚的には、DBの属性が増えるということです。

ー秘密計算の業界団体について教えてください。

竹之内:いくつか団体はあります。今回、新たにできた、秘密計算普及を目指す『秘密計算コンソーシアム』をはじめとして、秘密計算技術の整理を行う『秘密計算研究会』、『データ社会推進協議会』の中のユースケースの整理と法制度整備に向けたロビー活動を行う『秘密計算活用ワーキング(WG)』、そして法律上の整理などを行う『情報法制度研究所』、海外の『MPC Alliance』があります。
高橋:中でも秘密計算コンソーシアムは、6月に立ち上がった弊社Acompany主催で、EAGLYSさんにも共同運営の形で参画いただいているコミュニティです。プライバシーテックとか秘密計算を実際に活用していく観点で、法律やユースケースなどの課題を解消することを目的としています。月1回のイベント開催や、コンソーシアム限定のメールマガジンを配信しています。このメールマガジンでは、秘密計算の世界的な取り組みやユースケースを紹介しています。また、月1回の技術コラムも配信しています。
 

さいごに

第二回では、個人情報保護法をはじめとした、秘密計算に関連する法制度に深い造詣をもつ、ひかり総合法律事務所の板倉陽一郎先生に登壇していただきます。
秘密計算はデータ活用とプライバシー保護のトレードオフを解決する革新的な技術です。一方秘密計算で利用するデータが現行の法律でどのような扱いを受けるのかという疑問の声が多く上がっています。
そこで今回は、弁護士の板倉陽一郎先生をお招きして、法制度の観点から秘密計算の現状と将来性についてお話ししていただきます。
 
第二回秘密計算.jp 参加者募集開始!